【考察】えんとつ町のプペルの腐るお金「L」は実在した!なにがすごいか解説!
2026年3月27日に「映画えんとつ町のプペル~約束の時計台~」が公開されます。
前作「映画えんとつ町のプペル」に出てくる、不思議なお金「L」について考察していきます。
さて、えんとつ町のプペルは「ゴミ人間と夢を諦めない少年が星を見つけにいく」というストーリーです。
ですが、あの物語にはもう一つのストーリーが隠されているんですね。

それが「地域貨幣を守る町」という内容です!
お金が争いの種になるのは、「お金が腐らない」という性質があるからです。
逆説的ですが、「お金が腐れば、争う理由はなくなるだろう」という仮説から、えんとつ町は作られたのです。
そして、これが理想論ではなく、現実にあったお金がモデルになっているのです。
それが、ゲゼル・マネーです。
えんとつ町のプペルの不思議なお金「L(エル)」
えんとつ町で流通しているお金は「L(エル)」と言います。
三角形の硬貨ですが、材質などはわかりません。

そして、最も不思議な特徴が腐ると言う事です。
描写としては、えんとつ町の煙突掃除の棟梁ダンさんが、ゴミ人間プペルに給与を渡す時に「腐る前に使えよ」と言うんですね。
どうやら、えんとつ町で流通しているお金は腐るのです。
さて、お金が腐るとはどういうことでしょうか??
それは時間の経過と共に価値が目減りするという事です。
分かりやすく言うと1,000円が来週の水曜日には980円になってしまうという事です。

1,000円のうちに使いたいですよね!
減価する(腐る)お金の特徴とは!
L(エル)のように、価値が時間とともに減価するお金は実在しました。
どれも国が発行する法定通貨ではなく、地域限定でしか使えない「地域通貨」として存在したのです。
その地域通貨で、減価する事で有名な2つが
- ヴェーラ
- ヴェルグルの労働証明書
価値が減るお金を「自由貨幣」と呼び、スタンプ貨幣という仕組みが使われています。

ヴェーラも、ヴェルグルの労働証明書も同じ仕組みです。
ヴェーラは、ドイツのバイエルン州のシュヴァーネンキルヘン地域で使われた、地域通貨の名称です。
ヴェーラは、毎週水曜日に額面の2%の印紙(スタンプ)を購入して貼り付けないと使えないのです。
1,000円札の裏に、日付が書いてあって、毎週水曜日に20円分の印紙を貼り付けないと使えないという感じです。

1000円使いたいのに20円払わなきゃいけないから、その1000円札の価値は980円ということです。
更に次の週の水曜日まで持っていたら、また20円分の印紙を買わなきゃいけないから、960円の価値になってしまうんです。
これが、お金の価値が減るという仕組みです。
労働証明書
もうひとつ有名なのがヴェルグルの労働証明書です。
ヴェルグルは、オーストリアのチロル地方にある小さな町の名前です。
「労働証明書」と書くと、お金じゃないように聞こえますが、「働いたらもらえる証明書」なので給与のことです。
この労働証明書を出せば、ヴェルグルという町では生活用品や食品と交換できたのです。
ちなみにヴェルグルの労働証明書は、毎週水曜日ではなく、毎月月初めに1%分の印紙が必要になります。
シルビオ・ゲゼルについて
「ヴェーラ」も「ヴェルグルの労働証明書」にしても、これらの仕組みの根幹にあるのがシルビオ・ゲゼルと言う思想家の存在です。

シルビオ・ゲゼルは「ありとあらゆる物が時間とともに劣化していくのに対し、お金だけ腐らない事が秩序と自然を破壊し、人間を不幸にしてしまう」と提言していました。
ですが、当時は「マルクス主義(資本論書いた人の思想ね)」こそが正義だった時代なので、コイツ誰やねん案件だったのです。

実際に「シルビオ・ゲゼル」は、忘れられた思想家と呼ばれていました。
ですが、シルビオ・ゲゼルの予想は的中します。
このままの経済政策では、世界はインフレとデフレを繰り返し、第一次世界大戦が起こり、世界大恐慌と言う前代未聞の不景気が来ると…
シルビオ・ゲゼルは、「こうした方がいい」という具体案まで提言したのに、ガン無視されました。
そして実際に1930年に予想通りの不幸な時代が来ました。
それでも、強引な資本主義を貫き続けた結果が「ナチス・ドイツ」による独裁です。
当然に、シルビオ・ゲゼルは、「異端者」として法廷にかけられます(無実になったけど)。
ですが、その後ある事件が起きました。

この事件こそえんとつ町のプペルの裏ストーリーのモデルです。
その事件の名前がヴェルグルの奇跡です。
世界恐慌を救った地域通貨ゲゼルマネー
経済学で、減価するお金や腐るお金はゲゼルマネーと呼ばれています。
それはシルビオ・ゲゼルが提唱したからゲゼルマネーと呼ばれているのです。

法則的にはアンパンマンが打つパンチだから、アンパンチと呼ばれるのと同じです。
では、まずえんとつ町のプペルを思い出してみましょう。
劇中でスコップが語る炭鉱夫に語り継がれてる250年前の話です。
これこそえんとつ町の歴史なんですね。
この予告編にあるスコップのセリフを「250年前。海の向こうに随分荒れた町があった」の続きが凄いんです。
これが歴史上本当にあった、ヴェルグルの奇跡なんです
ヴェルグルの奇跡とは
ヴェルグルの奇跡というのは、1930年代に起きた世界大恐慌で失業者が町で溢れていた時にオーストリアで唯一失業者をゼロにした事を言います。
世界大恐慌で、失業者が世界中で増えた時に政府は色々な金融政策を試みますが、景気は低迷費し、失業者は増えていくばかりでした。
ところが、オーストリアのチロル地方にある田舎町ヴェルグルという町では、公共事業の対価に「新しい通貨」が使われました。

それが「労働証明書」と呼ばれるものです!
ヴェルグル地域のみですが、加盟店であれば生活必需品や税金を、この労働証明書で支払えるんです。
つまり、労働証明書とはただの証明書でありながら地域通貨としての機能を持っていたのです。
「失業者を減らすために、公共事業を作り地域通貨を作る」と言うのはごく普通の政策です。
しかし、ヴェルグルの労働証明書はなぜ奇跡を起こしたのでしょうか??
それは、この労働証明書が減価するゲゼル・マネーだったんです。
減価するお金「ゲゼル・マネー」
買い物ができる証明書は月のはじめに1%分の印紙(スタンプ)を貼らなきゃいけないのです。
そんなお金を持ってたら皆さんどうしますか??
絶対に月末までに使い切りますよね??
例えば、28日になんらかの売買で労働証明書が自分に回ってきたら

やば!
あと二日以内に使わなきゃ!
化粧水とか…
腐らないもの買わなきゃ!
そうすると世の中はどうなるかと言うと…
経済がめっちゃくちゃ回るんです!
お母さん理論の破綻
日本の母親たちは、子どもに
- 何かあったときの為に貯金しておくこと
- お年玉もらったからって、すぐに使わないこと。
- お金は大切に使わなきゃだめ
というお母さん理論を説きます。
しかし、不況時代はこれが全く通じないんです。
世界大恐慌の時も、当然ながらみんなこのお母さん理論になり、お金を使わなくなりました。
お金を使わなくなると、どんどん景気は悪くなり、お店は潰れ失業者が増えます。

新型コロナウィルス感染症で、目の当たりにしたでしょ??
そこで、失業者支援のための公共事業の支払いを腐るお金(ゲゼル・マネー)にしたのです。
働いて得たお金は期限付きで減価しますとなると、みんな世界大恐慌だろうがなんだろうが、お母さんのいいつけにアンパンチかまして使いまくったんです。
実際にヴェルグルでは、「税金を前納させてくれ!!」と言う人が、めっちゃくちゃ増えたんです。
税金なんて滞納が問題になるのに「腐る前に払えるものは払わせてくれよ!!」という逆転現象が起きたのです。
労働証明書は、納税にも使えました
えんとつ町のプペルで、ダンさんが「腐る前に使えよ」という一言にのは、こういう深い意味がこめられているんです。
ゲゼル・マネーの最大のデメリットと呼ばれているのが「貯蓄性の無効化」です。

ですが、不景気時にはこれが最大のメリットになるんですね。
そして、えんとつ町のプペルは、この「貯蓄性の無効化」を最大のメリットにするための物語でもあるのです。
具体的な数字としての凄さ
ちょっとだけ込み入った話をしますね。
このヴェルグルの労働証明書、つまりゲゼル・マネーがどれだけ凄かったかというと…
通常貨幣の14倍のスピードで流通したのです。

あなたの財布にある、その千円札はいつから入っていますか??
労働証明書は、週に平均8回所有者を変えます。
これはお金の特質ですが、お金が移動するというのは価値が発生していると言う事なんです。
この驚異のスピードが、通常の貨幣の交換速度の14倍なのです。
お金が循環するという事は、その分救われる人がいるという事です。
ヴェルグルの軌跡の結末
何度も言いますが、これは歴史上本当にあった話なのです。
ヴェルグルの奇跡がおこり、世界大恐慌なんてなんのそのとヴェルグル地域だけ失業者ゼロで景気が回復したのです。
政府が色々な金融政策をしても解決できなかった問題を、たった数ヶ月で回復させたのです。
そうしたところ、世界の経済学者は

ヴェルグルすごいな。
ゲゼルマネーは、不況時に有効なんだな。
これは、水平展開すべきだ!
となって、これでこの不景気を終わらせられる!となった時に、中央銀行がやってきて

ゲゼル・マネーは禁止だ!!
と、言ってきたです。
なぜかというと
我々の通貨は、シリングだ
こんなものが流通したら
誰もシリングを使わなくなるだろう。
つまり、国家への反逆行為
(シリングはオーストリアの通貨)

これは国家の通貨システムを乱すものだ!
発券と使用を禁ずる!
こうして、大成功しているにも関わらず使用を禁じられたのです。
世界の歴史をみても、こんなに珍しい事はありません。
うまくいっているアイデアが、パクられるのはよくあります。
ですが、大成功して結果を出しているものが禁じられるというのは不思議です。
ここが、えんとつ町のプペルのストーリーにつながるんです。
その方法では儲けられない
普通に考えて、中央銀行もアイデアをパクればいいじゃないですか?
でも、中央銀行はパクれないんです。
なぜなら、中央銀行は皆から預かっているお金(預金)を人に貸し付けて利息を得ているので、貯蓄性がないゲゼル・マネーでは商売ができないのです。
オーストリアの200もの地域が、ヴェルグルの奇跡からゲゼル・マネーを活用しようとしたのですが、それらは全て非中央集権になるからという理由で廃止となったのです。
そして、再び世界大恐慌の波にのまれヴェルグルは失業者30パーセントの町に戻りました。
えんとつ町のプペルは、ここまではまさに同じ内容です。
えんとつ町誕生の理由
映画ではスコップはサラッと語っていましたが、僕はこの話こそえんとつ町のプペルの醍醐味だと思っています。
えんとつ町のプペルの裏ストーリーはL(エル)と言う地域通貨(ゲゼル・マネー)を守るために作られたのがえんとつ町という事なのです。
映画では、250年前にレターという減価する貨幣を作った、シルビオ・レターは国家の通貨システムを乱す犯罪者扱いとなり処刑されました。
その後、その子孫は中央銀行の目の届かない場所を探し、町を作ったのです。
それが、えんとつ町です。

4000mの崖と海に囲まれた場所
そして、空から見つからないように町は煙をたいて空を覆ったのです。
映画では煙は「夢をさえぎるモノ」としてファジーな表現されていますが、実はシンプルに中央銀行の目に触れないようにするためのものという現実的な理由もあったのです。
えんとつ町のプペルの曲の一節で「嘘つき呼ばわりされたパパが言ってたよ」とありますが、嘘つき呼ばわりされたのはルビッチのパパ(ブルーノ)だけではなく、シルビオ・レターもまた嘘つき呼ばわりされていたのです。
そして、映画の最後は煙が晴れ船出です。 絶対に続きがあるはずです。
夢を諦めない物語と言う楽しみ方もありますが、えんとつ町のプペルを経済学から見るという楽しみ方もあります。
そして、西野亮廣の凄いところは、その設定力です。
町とお金とコミュニティが、かなり細かく設定されているので、そういう楽しみ方をしてみるのもいいと思います。
論より証拠!あの町の名は…
では、最後に僕のえんとつ町のプペルとヴェルグルの関係性の証拠をお見せします。
スコップの回想シーンで「荒廃した町」が出てきます。

250年前にシルビオ・レターがいた町ですね。
映画でも絵本でも、その町の名前は語られていませんでしたが、なんと台本に書かれていたのです。
※えんとつ町のプペルの台本は映画公開前に販売されていました。

持っている方は116ページを確認してみてください。
これです!!
(出典:映画えんとつ町のプペル台本)

ヴェルグルだ!
あの町の名前はヴェルグルだった!
僕の仮説が当たっていた!
まさか、台本にサラッとこんな秘密が隠されているとは思いませんでした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今日はここでペンを置きます。
最後に、このブログの参考文献を置いておきます。

